恋は計算通り、君は想定外

19 作戦は成功し、次の段階へ進む

 「もしもし、警察ですか?」
 =はい、どうかされましたか?=
 「まだこんな時間なのに、高校生がゲームセンターで遊んでいるようなのですよ。ちゃんと学校に行くように注意して頂きたいのですが。近頃の若い者は勉強もしないで真昼間から遊んでばかり‥‥それはあんたら警察の怠慢じゃないんですかね?」
 =あ、いえ。その様な事は=
 俺の声色もなかなかのものだ。
 「町内会の皆とも話してるんですがね。このままだと非行が蔓延した町になってしまう。嘆かわしいものだと」
 =分かりました。巡回します=
 「今、すぐにお願いします。ゲームセンターに! ああいう輩はその場で補導しないと」
 =すぐに向かいます=
 「お願いしましたよ」
 電話を切って三分程経った後、遠くから二人の警官が歩いてくるのが見えた。
 「よし、今だ」
 合図を送ったが、なかなか店から出てくる気配がない。
 このままではまずい事になる。
 そう考え始めた矢先、橘愛理の手を引いた陽奈が出てきた。
 それからほどなくして警察がゲーセンの店内に入っていく。
 間一髪だがうまくいったようだ。
 今頃は、指示通りに、偶然を装った陽奈が、補導から助けた事になっているはずだ。大筋は決まっているが、これをきっかけに仲良くなるように、また計画を立てなければならない。
 その日は夕方になって陽奈が俺のアパートを訪ねてきた。
 「私に入口のパスワードを教えてくれたけど、いいの?」
 「構わない。これからしばらくは家に来る機会が増えるだろうし、その度にいちいち下に降りていかなければならないのも不便だ」
 「まあ、そうかも」
 「それより、ちゃんと指示通りにやったのか?」
 「うん。あれからゲーセンの中を警察がいろいろ歩いてたから、二階にいた石垣さんは捕まったと思う。私は橘さんに‥‥一応、感謝されたけど‥‥彼女、やっぱり石垣さんの事が気になってたみたい。大丈夫かなって言ってた」
 「その点は心配ない。補導されたとしても、交番で記述をとられるだけだ。最悪、親を呼ばれるかもしれないがな」
 「‥‥‥‥でも悠太さ‥‥」
 「ん?」
 「私‥‥恨まれないかな。石垣さんに‥‥橘さんだけと逃げたわけだし」
 「そうはならない」
 「やけに自信満々ね」
 「彼女達は親友だ。お互いが大事だ。その安全を図った恩人を悪く思う事はない。‥‥そもそもそんな穿った見方をしてしまうのがぼっちの性格だ」
 「悪かったわね」
 「それに約束した以上、陽奈に何か不都合があるなら、俺が全力で修正するから心配は何もない」
 「‥‥‥‥ありが‥‥と‥‥」
 陽奈は顔を伏せた。
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