恋は計算通り、君は想定外

20 モブとつながれば、陽キャにも届く。

「それで、ちゃんと橘愛理と、あの話はしたのか?」
 あの話というのは、期末試験の話だ。
 橘愛理はそれほど勉強が出来ないわけでもないが、突出してるわけでもない。勉強を聞こうにも、友人の石垣みつきは、その点に関してはからっきしダメだ。
「期末が近くなったら勉強を見てあけるって約束した。でも大丈夫かなー」
 陽奈はがくっと肩を落とす。
 今現在の学力で言えば、陽奈より橘愛理の方が上だ。
「その心配が本当の事にならないように、これからは更に勉強に力を入れる。直前になったらどうゆう問題が出るか大体分かってくるから、そこを重点に教える。そのまま彼女に伝えればいい。簡単な事だろ」
「‥‥うん‥‥まあ‥‥」
「彼女とのその勉強会は、そのうち、石垣みつきも加わるはずだ。彼女の心証をいかに良いものにするかで、今後の展開が変わってくる」
「そうか‥‥石垣さんと仲良くなれば‥‥」
「昔の陽奈とは違う事を彼女が宣伝してくれる。これをしておかないと、いくら陽奈自身のスペックを高めようが、大井沢に思いを伝えようが、周りに否定されて終わりだ」
「‥‥‥悠太ってさ‥‥‥何処まで先を考えてるの?」
「考えられるだけ考えてる。俺も昔は同じぼっちだったからな。間違いは嫌いだ」
「は? 悠太が?‥‥嘘」
「与太話はともかく、さっそく本題の勉強にとりかかる」
「え! 今から?」
「時間的にはまだ大丈夫だろ? 今日はバイトもないし」
「で‥‥でも‥‥ほら‥‥今日は色々あって疲れたし‥‥」
「目的達成の為に一番重要な事は、妥協は禁物だという事だ。今、出来る最大限の事をする。それだけで自分の願いは全て叶う。だから、今は勉強に集中しろ。それに、勉強を教えに行って教えられたんじゃ、情けないだろ」
「う‥‥分かったわよ」
 ぐったりしている陽奈の背中を、無理矢理しゃきっとさせる。
何とか期末近くになるまでに陽奈の学力をそれなりにしなければならないのは、結構きつい事でもあるが、何とかなるだろう。
直接、陽奈の方から大井沢にアタックする事は出来ない。それは陽奈がやって失敗済だ。だから、外堀から埋めて向こうから行動を起こさせるしかない。
こうして色んな仕掛けを撒いておけば、そのうち引っかかる。
それがいつになるか‥‥そう遠い日ではないはず。
月を跨ぐ事なく、陽奈と橘愛理はよく話す様になっていた。教室の中でもその姿を良く目にする。そうしてるうちに最初は恐る恐る反応を伺っていた石垣みつきもその輪の中に加わり始める。石垣みつきの疑いを晴らしたのは橘愛理の説得が大きい。思惑通りに事は進んでいる。
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