恋は計算通り、君は想定外
22 パートナーの再定義
「それでさ‥‥草ケ谷さん‥‥」
イケメンが言葉を濁している。
「母さんが、今度、うちに連れて来いってうるさいんだ。それで‥‥どうかな?」
「え?‥‥うん」
陽奈が頷くと、前に座る雄二を含めた男子が冷やかしの声をあげる。
ここで公にそんな事を言うからには、どうやら水沢さんには本当に告白はしてはいなかった‥‥というのが事実だったようだ。
そう言えば水沢さんは‥‥。
前を向いたまま、黙って背中を向けている。長い髪で表情は分からないが、やはり落ち込んでいるに違いない。
こうなる事を誘導してしまった事への罪悪感を感じないわけではない。背中を見てると、いくら俺でも心が痛む。だが大井沢は水沢さんと陽奈への返事を保留にして、後で気に入った方を選ぶような奴だ。あのまま付き合った所でろくな未来はない。だからこれで良かったのだ。
ヒロインは幸せにならなければならない。そう決まってるのだ。最近はやりのバッドエンドを俺は認めない。主人公の俺が必ずその顔を笑顔に戻してみせる。
そうしてひとしきり陽奈フィーバーで沸いた学校の時間も終わり、俺は一人、いつもの並木道を歩いていく。今日は五時間目までしっかり授業があり、夏に向かう途中の中途半端な今の季節は、風が吹くと少しだけ肌寒いような気がする。
“悠太!”
「‥‥‥‥」
呼ばれて俺は立ち止まる。
聞き覚えのある声。俺はため息をついて振り返った。
「どうした? もう目的は果たしただろう。既に二歩も三歩も陽奈がリードしてる。大井沢の家に行けばそれで上がり。俺の役目は終わりだ」
それだけ言ってまた歩き出そうとしたが、
「ま、まだ終わってない!」
そう言って陽奈は走ってきて俺の行先を塞いだ。
「私は‥‥その‥‥これでいい‥‥のかもしれないけど、悠太はこれから水沢さんにアタックするんでしょ?」
「そうだ」
「だったら、今度は私が協力するから」
「?」
「水沢さんと近づきたいなら、同じ女子がいた方がやりやすいでしょ?」
「それはそうだが。別にそれぐらいなら、どうとでもなる」
「私の勉強どうするの?」
「既に点数を取るパターンは教えただろう。馬鹿正直に勉強しなければ、陽奈も満点が取れるぐらいにはなっている」
「‥‥そ‥‥」
陽奈は何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。
イケメンが言葉を濁している。
「母さんが、今度、うちに連れて来いってうるさいんだ。それで‥‥どうかな?」
「え?‥‥うん」
陽奈が頷くと、前に座る雄二を含めた男子が冷やかしの声をあげる。
ここで公にそんな事を言うからには、どうやら水沢さんには本当に告白はしてはいなかった‥‥というのが事実だったようだ。
そう言えば水沢さんは‥‥。
前を向いたまま、黙って背中を向けている。長い髪で表情は分からないが、やはり落ち込んでいるに違いない。
こうなる事を誘導してしまった事への罪悪感を感じないわけではない。背中を見てると、いくら俺でも心が痛む。だが大井沢は水沢さんと陽奈への返事を保留にして、後で気に入った方を選ぶような奴だ。あのまま付き合った所でろくな未来はない。だからこれで良かったのだ。
ヒロインは幸せにならなければならない。そう決まってるのだ。最近はやりのバッドエンドを俺は認めない。主人公の俺が必ずその顔を笑顔に戻してみせる。
そうしてひとしきり陽奈フィーバーで沸いた学校の時間も終わり、俺は一人、いつもの並木道を歩いていく。今日は五時間目までしっかり授業があり、夏に向かう途中の中途半端な今の季節は、風が吹くと少しだけ肌寒いような気がする。
“悠太!”
「‥‥‥‥」
呼ばれて俺は立ち止まる。
聞き覚えのある声。俺はため息をついて振り返った。
「どうした? もう目的は果たしただろう。既に二歩も三歩も陽奈がリードしてる。大井沢の家に行けばそれで上がり。俺の役目は終わりだ」
それだけ言ってまた歩き出そうとしたが、
「ま、まだ終わってない!」
そう言って陽奈は走ってきて俺の行先を塞いだ。
「私は‥‥その‥‥これでいい‥‥のかもしれないけど、悠太はこれから水沢さんにアタックするんでしょ?」
「そうだ」
「だったら、今度は私が協力するから」
「?」
「水沢さんと近づきたいなら、同じ女子がいた方がやりやすいでしょ?」
「それはそうだが。別にそれぐらいなら、どうとでもなる」
「私の勉強どうするの?」
「既に点数を取るパターンは教えただろう。馬鹿正直に勉強しなければ、陽奈も満点が取れるぐらいにはなっている」
「‥‥そ‥‥」
陽奈は何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。