恋は計算通り、君は想定外

7 隣の女子のトゲが、俺にだけ刺さる

 「‥‥‥‥なに?」
 「‥‥‥‥」
 俺がじっと見てたせいで、彼女はこっちに気づいてしまった。相変わらず不機嫌そうだ。
 いつも喋ってる友人らしき奴らとは普通に笑っているみたいだが、なぜか俺にだけトゲがある。
 「何か、向こうに混ざりたいみたいな感じだったからな」
 俺はチラっと前の席の二人に顔を向けた。
 「行ってくればいいんじゃないか?」
 「は?」
 完全に顔が怒っている。
 「何それ? キモいんだけど」
 それだけ言って、プイと横を向いてしまった。
 まあ、彼女にどう思われようが、俺がどうこう思う事でもない。大切なのは適当に誤魔化したりしない事だ。
 中間テストが終わると、期末試験まではまだ余裕がある。と言って、あまりにも余裕をこいていると手痛いしっぺ返しが来るのは、分かっている。だから俺は油断はしない。
 今の所は順調だ。
 ちなみに俺は顔が並みだが、身長はそれなりにある。学業に手を抜かず、だらしない体にならない様に、常に食べた分のカロリーを計算して‥‥。そこまでしている。それが、普段は凡人だが、いざという時に動ける主人公というものになれるというものだ。
 大井沢はなかなか本性を現さない。水沢さんと付き合うフラグが立ちつつある。いや、俺が知らないだけで、もう付き合ってるのかもしれない。
 要するに、正統的な恋愛的な物語の流れではなかったという事だ。それならそれで、別のストーリーが始まっている。今はまだ気づいていないだけで、後から考えればそうだったのかと、納得するのが人生というもの。
 その流れをいち早く見極めなければならない。
 俺はどのタイプの主人公なのだろう。
 などと考えていたら変化は唐突に訪れた。
 その隣の女子が、教科書を忘れてきた。
 ラノベではよくあるイベントだが、リアルのこの状況だとちょっと違う。
 その隣にいるのは、ヒロインの水沢さんでなければならないのだがな。
 「‥‥‥‥」
 授業が始まったのに、彼女は机の上にノートしか広げていない。先生に対する何かの意趣返しでもなければ、ただ忘れてきた事は確定だ。隣の女子にでも見せてもらうだろうと思ってたが、それもしない。
 「教科書、忘れてきたなら見るか?」
 「別にいいし」
 「そうか」
 横眼で俯いてる彼女を見てから、俺もまた教壇に顔を戻した、
 本人がそう言うならそれでいいだろう。
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