恋は計算通り、君は想定外

8 どうやら俺は巻き込まれ型の主人公らしい

 本人がそう言うならそれでいいだろう。だが、今の授業、基礎解析の先生は、何人かの生徒に質問して答えさせていくのが定番だ。それは一見、ランダムに見えるが、法則性がある。確率的に、彼女が当てられるのは三番目だ。そして問題はと言えば、例題の問い5の式を求めるというもの。教科書無しでは難しいはすだ。
 「‥‥‥‥ヤレヤレ」
 俺はこの台詞で巻き込まれ系の主人公になるのが確定する。この流れでいけば、いつかヒロインのイベントに巻き込まれる事もあるだろう。
 「先生」
 俺は手をあげて立ち上がる。
 「教科書忘れたので、隣の‥‥」
 名前を憶えていない。
 「隣の人から見せてもらっていいでしょうか?」
 窓際で一番後ろの席の俺の隣は、彼女しかいない。
 「忘れたのか? じゃあ草ケ谷君に見せてもらいなさい」
 「はい」
 そうか、彼女は草ケ谷というのか。
 机を持って、彼女‥‥草ケ谷の隣に机をくっつける。
 「はあ? あんた何勝手に‥‥」
 「次に廊下から三番目の男子が当てられたら、その次にお前が当てられる」
 嫌そうな声を無視して、俺は顔を見ずに真っ直ぐに黒板を見つめてそれだけ言う。
 「は?」
 「キモくても、それが真実だ」
 「‥‥‥‥」
 「今から、23ページの問題5を見ておけ」
 「あんた、何様?」
 「別に疑うなら、それでいい。違ってたら俺は二度と関わらない」
 「‥‥‥‥」
 それで納得したのか、草ケ谷は俺の教科書を奪うと、言った通り23ページを開いた。
 「え?!」
 開いた草ケ谷は教科書と俺の顔を交互に見る。
 「どうかしたか?」
 「いや‥‥その‥‥全部答えと解き方が書いてあるし‥‥」
 「書いてある通りに応えればいい」
 「‥‥‥‥」
 またもや渋々といった顔をしてる。どう思われていても構わないが、草ケ谷と関わる事は、ヒロインの水沢さんとのイベントを起こす為に、何がしか必要な事だ。
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