私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
グッと、親指を突き出され、口角をわずかに引きつる。そこまで計算ずくとは、もはや脱帽だ。

厄介な人に捕まらなければいいけど……

「よーし、今日は思いっきり飲むぞ! 凛、こっちこっち!」

私の心配を他所に、傍若無人で張り切る菜穂。そんな彼女の背中についていくと、センターテーブルに豪華な料理がずらりと並んでいるのが見えた。

そこにはすでにたくさんの人が集まっている。

「うわ、美味しそう」

菜穂が言うようにどれもおいしそうで、高級食材だらけ。適量をお皿に盛ると、三人でそれを食した。

「うわ、このウニめっっちゃ美味しい」
「菜穂さん、取りすぎじゃないですか?」
「唯こそ、もっと取らないと損だよ損」

各々好き勝手感想を言い合いながら、飲み食いする。料理の種類は和洋折衷になっていて、どれも舌をうならせる。さすが都内随一の病院が御用達にしているホテルだ。

普段残業も多く、派閥争いに巻き込まれることもあるけれど、この日だけはこの病院に就職してよかったと思える。

「あ、一ノ瀬だ」

もぐもぐと咀嚼しながら入口に目をやると、今来たであろう一ノ瀬が、その場でキョロキョロしてるのが見えた。

人混みのなかでも頭一つ飛び出ているから、どこにいても目立つし、わかりやすい。

「一ノ瀬! こっちこっち!」

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