私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
差し出された紙袋を後輩から受け取ると、激しく鳴り響く鼓動を聞きながら封を開ける。中には、丁寧にラッピングされた小箱が……。

そしてその下に、一枚のメッセージカードが入っていた。

恐る恐るメッセージカードを開く。すると、見慣れた字が目に飛び込んできた。

『凛、誕生日おめでとう。実は異動になって、この病院に来るのは今日で最後になる。元気で』

最後、という二文字が鉛のように重く私の胸に突き刺さる。間違いない、これは涼介からだ。

「しかも異動って……」

それは二度と会えないということを意味する。彼らは転勤族で、県外に行くこともあると以前言っていた。

だけど物理的距離をとることで、けじめをつけられる。きっとこの恋心も、風化してくれるはずだ。

これでいい、これでいいんだ。

手紙を持つ手に無意識に、力がこもる、

だけど頭ではそうわかっているのに、古い映画のフィルムが巻き戻されるように、楽しかった記憶だけが残酷なほど鮮明に蘇ってくる。

院内で見かけても、ずっと避けていたのは自分のくせに、もう二度と会えないのだと分かった瞬間、喉が焼けるような渇きを覚える。
「会いたい」

気づけばうわ言のようにそう呟いていた。

こんな紙り切れ一枚じゃ嫌だ。最後に一度だけでいいから、涼介に会いたい。一目でいいから焼き付けたい。

その衝動に突き動かされ、私は椅子を蹴るように立ち上がった。


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