私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

涼介の姿をみつけた瞬間、私は考えるより先に駆け出していた。

「涼介!」

私の声に驚いた彼は、大きく目を見開く。その瞳に、困惑の色が浮かんでいる。

「凛……どうしたの。連絡きてびっくりした」
「プレゼント、ありがとう。嬉しかった」
「受け取ってくれたんだ。よかった」

そう言って優しく目を細め、私を見下ろす。

普段の優しい彼の姿を前にすると「もう一度触れたい」「今すぐその胸に飛び込みたい」という強い衝動が、理性の声をかき消すほどに、どんどん大きくなっていく。

自分の気持ちを、改めて認識する。

「一日早いけど、誕生日おめでとう。凛」
「……っ」

一瞬にして感極まった。泣きそうになった。一番言われたかった人。

叶わないと思っていたのに……。

「ありがとう……」
「直接言えてよかった」

ふっと柔らかく笑う涼介。やっぱり、この人が好きだ。

ほんの数週間ぶりなのに、涼介の落ち着いた柔らかい雰囲気がすごく懐かしい。

愛おしい……

「どこか座ろうか」
「うん……」

涼介に促されるようにして、植栽が施されたマンション内の小さな広場に向かう。そこにあるベンチに並んで座ると、彼の体温が伝わってきて、さらに心臓がドキドキしてきた。

ふと、一ノ瀬のことが気になり、ハッとしながらさっきまでバイクを停めていた道路脇を見る。だけど一ノ瀬はいつのまにかいなくなっていた。

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