私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「で、話しっていうのは……?」

ふと私に体を向けた涼介が、切り出す。

今本音を言ったら、どんな顔をする? 重たい女だって思う?無意識に、膝の上で握っていて拳に力が入る。

でも言わなくちゃ、どんな答えにしろこのままじゃ前に進めない。足元に視線を落としたまま、唇に力を入れると、ゆっくりと口を開いた。

「私、待ちたいの、涼介のこと。沙羅さんが落ち着くまで。いつになってもいいから……戻ってきてほしい」
「……凛」

私の名前を呼ぶ涼介をゆっくり見上げると、そこには少し驚いたような、微笑んでいるような、複雑な表情を浮かべた涼介がいた。

「ダメ、かな」

しばらく続いた沈黙の後、涼介は何も言わずに、ゆっくりと口元を引き結んだ。どんな言葉が、その唇から飛び出すのだろうか。

私は緊張で乾いた唇を噛みしめ、彼を食い入るように見上げた。

怖い……。でも答えを聞きたい。

聞かなきゃ私はずっとあの日に囚われたまま進めない。

「気持ちはすごく嬉しい」
「うん……」
「だけど、無理だよ」

はっと息を吐き出すようにして紡がれた、優しい拒絶の言葉。その瞬間、ズキン、と心臓が棘に刺されたかのように鋭く痛んだ。足元がまた、ぐらぐらと頼りなく揺れ始める。

「この先どうなるのか、どうするのか、まだ何もわからないんだ。沙羅も、少しずつだけど元気にはなってる。でも、やっぱり傷は深くて……」

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