私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
海で見たあの時と同じように、深い苦痛で歪んでいる。それを見ているだけで、私の息まで苦しくなった。

「俺とこれからどうしたいのか、沙羅に任せるつもりだ。ずっと一緒にいたいって言うならそうする。また離れるって言うなら、そうしようと思ってる」
「沙羅さんの意思に、全てを委ねるっていうこと?」

私の問いに、彼はこくりと一度だけ、重々しく頷いた。

「だから、待っててとは、言えない」

「……そっか」
「ごめん、凛」

あの日とほぼ同じ衝撃で、ひび割れた心が、今度こそ粉々に砕け散った。

ほんの少し芽生えた期待が、こんなにも痛い罰となって返ってくるなんて。

私はなんて愚かなんだろう。浅はかなのだろう。

「凛、俺さ」

言いながら涼介は、手の甲で私の頬に落ちた涙を親指でそっと拭う。

俯いた顔から覗かせる長いまつげ。いつもその目で見つめられた。

でも彼は、私の元には帰ってこないんだ……。

「あの時何度も言おうと思った。待っててほしいって。でもそれは凛を縛ることになる。凛にだって、これからたくさん出会いはあるし、その言葉で縛るわけにはいかない」

横に首を振る度、雫となり涙が飛び散った。

「出会いなんていらない……。涼介はそれでいいの? 義務的に一緒にいて涼介は幸せになれるの?」

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