私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
菜穂もスプーンをくわえたまま、信じられないといった顔でポカンとしている。テーブルの上の湯気が、一瞬にして冷気を帯びたように感じられた。
「それって、彼女がいるってこと?」
「それとも、奥さんとか?」
遠い宙を見つめる一ノ瀬に、菜穂と二人で矢継ぎ早に質問攻めにする。心臓がドクリと不穏な音を立て、胸の奥がざわつき始めた。
「さぁ、そこまでは。ただ先月、銀座を二人で腕を組んで歩いてるのを見かけた。いつ言おうかと思ってたけど、お前が本気になりそうだったから一応忠告まで」
一ノ瀬の忠告に、私の背中をサーっと冷たい汗が伝い落ちる。胃のあたりがキュッと締め付けられるような感覚に襲われた。
もしかしてこの前のパーティーの時、一ノ瀬がじっと木崎さんのことを見ていたのはそのせいだったの?
彼が向けたあの意味ありげな視線の理由が、今すとんと腑に落ちた。
「……そうなんだ。教えてくれてありがとう」
グラスの縁に視線を落としたまま、私はか細い声で礼を言った。その声はまるで砂に擦れるように細かく、二人に届いているかどうか怪しいくらいに小さかった。
そんな私に、菜穂は心底同情するような目を向けていて、一ノ瀬はどこかばつが悪そうに、視線を逸らしている。嫌な役回りをさせてしまった彼に、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「二人とも、気にしないで。ほら、私まだ無傷だしさ」
「それって、彼女がいるってこと?」
「それとも、奥さんとか?」
遠い宙を見つめる一ノ瀬に、菜穂と二人で矢継ぎ早に質問攻めにする。心臓がドクリと不穏な音を立て、胸の奥がざわつき始めた。
「さぁ、そこまでは。ただ先月、銀座を二人で腕を組んで歩いてるのを見かけた。いつ言おうかと思ってたけど、お前が本気になりそうだったから一応忠告まで」
一ノ瀬の忠告に、私の背中をサーっと冷たい汗が伝い落ちる。胃のあたりがキュッと締め付けられるような感覚に襲われた。
もしかしてこの前のパーティーの時、一ノ瀬がじっと木崎さんのことを見ていたのはそのせいだったの?
彼が向けたあの意味ありげな視線の理由が、今すとんと腑に落ちた。
「……そうなんだ。教えてくれてありがとう」
グラスの縁に視線を落としたまま、私はか細い声で礼を言った。その声はまるで砂に擦れるように細かく、二人に届いているかどうか怪しいくらいに小さかった。
そんな私に、菜穂は心底同情するような目を向けていて、一ノ瀬はどこかばつが悪そうに、視線を逸らしている。嫌な役回りをさせてしまった彼に、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「二人とも、気にしないで。ほら、私まだ無傷だしさ」