私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
仕事中の彼の誠実な態度も知っている。予期せぬトラブルが発生したときも、通常ならメーカーに責任を押し付けたり、言い訳を並べたりする営業もいる中で、彼は一人冷静にすぐに現場に駆けつけ、原因究明と解決のために奔走する人だ。

その際も、決して嘘やごまかしをせず、不具合の状況や対応策を丁寧に説明し真摯に対応する人だと、職員の間では周知の事実。

「……話してくれてありがとう。涼介のこと、信じるよ」

私の声は少しだけ震えていた。だが心の底から安堵し、すとんと重い荷物が下りたような気分だった。くすぶっていた「疑惑」の影が、音もなく消えていく。

「ありがとう、凛。信じてくれて」

彼はそう言って、私の頭を撫でると、再びゆっくりと車を発進させた。

街の明かりが流れ、沈黙が訪れる。だけどその沈黙は決して重苦しいものではない。

しばらくして、涼介が運転しながらちらりと私を見た。彼の瞳に、いつもの優しい光が宿る。彼は柔らかい雰囲気をまとったまま、遠慮がちに切り出した。

「今度さ、うちに泊まりにこない?」

その言葉に、私の思考は一瞬フリーズした。涼介の家にお泊まり?

少し想像しただけで、心臓がドクンと大きく鳴り、全身の血が逆流したかのように熱くなる。

「家に?」

聞き返した私の声は、ひどく上ずっていた。

「うん。凛とゆっくり過ごしたい。どうかな?」

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