私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~


それにもかかわらず、他の女性社員からは「一ノ瀬さんだ」「見て、一ノ瀬さんがいる」などと、ヒソヒソと噂されている。

見た目はいいけど、性格悪いです! って背中に張り紙してやろうか?

「凛の唐揚げ、一個もーらい」
「あ、ちょっと菜穂!」

隣からひょいと手が伸びてきたかと思えば、一瞬にして唐揚げを盗まれる。もう、油断も隙もないんだから。

だいたい4つしかない唐揚げのうち、一つを取っていくなんてひどくない?  あー、私の日替わり定食が一気に寂しくなった。

「ねぇ、一ノ瀬、あんたさっきからチラチラ見られてるよ。珍しく社食にいるからじゃない?」

ムッと口をとがらせていると、菜穂が茶化すように囁いた。さすがの菜穂も、一ノ瀬に対する視線に気づいたらしい。

一ノ瀬は普段、お昼は外に出ることが多い。だから社食にいるのは、私から見ても少し不思議な感じ。

すると一ノ瀬は、ぴくりとも顔色を変えず無愛想に言い捨てた。

「なにそれ、キモ」
「ひっーど! あんたってやつは乙女心ってのがわからないわけ?」
「知らない女からジロジロ見られたら、誰だって気色悪いだろ」

いやいや、言い方ってものがあるでしょ。隣の女性陣も明らかにがっかりしているし。人の反応で言動を変える人じゃないから、言っても改めないだろうけど。

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