私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
それからも、私が何を聞いても彼の態度はずっとよそよそしいままだった。
いつもの優しい笑顔は消え、ただぼんやりと虚空を見つめている。
もしかして、来てほしくなかった? それとも何か隠してる?
そう率直に尋ねたいが、聞くのが怖い。
ガラスのテーブルに映る自分の顔は、場違いなほど不安に揺れている。
彼が選んだであろう高価なソファに身を沈めても、心は少しも安らがない。まるで、値札が付いたままの展示品に座っているような居心地の悪さがあった。
隣に座る涼介との間には、目に見えない透明な壁があるかのようで、彼の纏う空気に触れたいのに、その指先は虚しく宙を切るばかり。
綺麗に整頓された空間で、私の心だけが行き場をなくして散らかっていく。
寂しいよ、と声に出せたらどんなに楽だろう。だがその一言は、喉の奥でつめたく固まったまま。
「ねぇ、やっぱりお腹すいたね。何か美味しいものでも作ろうよ! 一緒にスーパー行かない?」
この重苦しい空気をどうにかしたくて、私はわざと明るい声を出した。涼介は一瞬迷うような素振りを見せたが、「……うん」と力なく頷いた。
家を出ると二人で近所のスーパーへ向かう。空は厚い雲に覆われ、今にも泣き出しそうなどんよりとした色をしている。紫陽花の花が、沿道の植え込みで雨を待ちわびるように鮮やかな色を放っていた。