私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
食事ができあがり、テーブルに運ぶと挟んで向かい合って座る。

今日のメニューは、サラダにグラタン、そしてさっき買った肉の塊をローストビーフにした。

実は今日のためにこっそり家で練習してきたのだ。

「どうかな?」

ゆっくりと口に運ぶ涼介に、感想を尋ねる。

「うん、おいしい」
「よかったぁ……!」

だがそう言いつつも、涼介は箸を進めようとしない。

「あ、もしかして苦手だった?」
「そんなことないよ。ちょっと食欲なくて」
「そっか……じゃあ、私が全部食べちゃおーっと」

大袈裟にはしゃいでみせると「うん、美味しい」と相槌を打ちながら、笑顔を張り付け、自分で作った料理を口に運ぶ。だけど自分の気持ちに嘘をつけばつくほど、虚しくなっていく。

本当は二人で笑いながら食べたかった。涼介に喜んでもらいたかった。

私は心の中で泣きながら、目の前のご飯をほぼ一人で平らげた。

◇◇◇
 
「はぁ……」

二人分の食器を洗いながら、思わず不安が口からこぼれた。

リビングにいる涼介は、ソファに座ったまま微動だにしない。その背中が、まるで分厚い壁のように感じられた。

私が何か、気に障るようなことしちゃったのかな……。

今日一日の出来事を必死に頭の中で再生してみる。スーパーでの会話も、食事中の他愛ない話題も、いつも通りだったはずだ。

それなのに彼の心は今、明らかにここにはない。

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