私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
何度考えても思い当たる節がないことが、かえって深い霧の中へと迷い込ませる。蛇口の滑らかなクロムに映る自分の顔が、情けないほど歪んで見えた。

カチャン、と洗い終えたグラスを置く音が虚しく響き、耐えがたいほどの孤独が私を襲った。


その夜、私たちは同じベッドに入った。肌に触れるシーツのきめ細やかな感触が、心地いい。

部屋の明かりを落とすと、窓の外のきらびやかな夜景がより一層、際立って見えた。

「このベッド、すごくふかふかだね」
「……ああ」

隣から返ってきたのは短く、感情の読めない相槌だけだった。私は意を決して、彼のほうへと言葉を続ける。

「ねぇ、涼介。疲れてる……? それとも、私、何か気に障ることしちゃったかな……」

その問いかけの途中、涼介はゆっくりと凛に背を向けた。その背中が、全ての答えを拒絶しているように見える。

嫌だ、そんな風に背を向けないで……

私は躊躇いがちに腕を伸ばした。温もりを確かめるように、そっと彼の背中に抱き着く。

しかし、腕に触れた瞬間、彼の身体がこわばるのが分かった。

そして私の手を掴むと静かに、有無を言わせぬ力でそっと引きはがした。

「……ごめん」

氷のように冷たい声が、耳元で囁かれる。

「どうして?私じゃだめ?」
「そういうのじゃないんだ……でも今はそれしか言えない。本当にごめん。おやすみ」

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