私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
拒絶された手は、行き場をなくしてシーツの上を彷徨う。

すぐに聞こえ始めた寝息は、まるで私の存在そのものを拒むかのように静かな部屋に響いた。隣にいるのに、地球の裏側よりも遠く感じる。

声にならない嗚咽を必死に飲み込む。彼の温もりどころか、自分の心の温もりさえも見失い、私はただただ冷たいシーツを固く握りしめ、夜が明けるのを待った。

翌朝、カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ますと、隣にはまだ眠っている涼介の姿があった。

ベッドからそっと抜け出すと、朝食の準備を始めた。

だけど頭の中は不安でいっぱい。このまま帰ったらきっと後悔する。

私は包丁を置くと、まだ眠る涼介を揺さぶった。

「涼介、起きて」

私が少し強い口調で言うと、彼はゆっくりと寝返りを打ち、重たそうに瞼を開けた。

「……ん、おはよう」
「私、涼介と話したい」

溜め込んでいた不満をぶつけると、彼はバツが悪そうに視線を逸らした。同時に、我慢していた涙がじわじわと瞳に広がっていく。

涼介は、深くため息をつくと、力なく謝罪の言葉を口にした。

「……ごめん」
「謝ってほしいんじゃないの」
「本当に、ごめん。ちょっと色々あって……。今は、うまく話せないんだ」
「色々って? 何があったの? 仕事のこと?」

彼は小さくかぶりを振ると、ベッドから起き上がった。

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