私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
その優しい響きにはっとして顔を上げると、そこにはいつもの涼介がいた。眉を下げ、楽しそうに目を細め私を見つめている。私が大好きだった、あの笑顔で。

「凛は子供だなぁ」

彼は呆れたように、でもその声には確かな温かさを含んでいる。

その太陽のような声色に、私の心も自然と解きほぐされていく。強張っていた頬が緩み、つられるように笑顔がこぼれた。

いつぶりだろう。涼介の前でこんな風に心から笑っているのは。 一瞬、時が巻き戻ったかのような錯覚に、胸の奥がきゅっと甘く痛んだ。

「失礼な。立派な大人ですけど?」
「中身が伴ってないけどな」

よかった、笑ってる。

少し前までは当たり前の事だったのに、今では奇跡のようにも思える。

「うっわ、」

その時、それまで穏やかだった波が、悪戯っぽく大きなうねりとなって二人の足元を襲った。

私は咄嗟に避けたが涼介は間に合わず、綺麗な紺色のスニーカーが完全に海水に浸かってしまう。

「最悪だ、びしょ濡れ……」

みるみるうちに濃く変色していくスニーカーを見て、彼が本気で顔をしかめる。

その滅多に見せない慌てた姿に、私は思わずクスッと笑いを漏らした。

「だから裸足になればって言ったのに」
「くそぉ……」

「冷てぇ」と悪態をつきながら、涼介はしぶしぶ靴を脱ぎ、裸足になる。

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