私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
夕暮れのオレンジ色の空と相まって、あまりにも綺麗な横顔にドキリと心臓が跳ねる。

「覚えてるよ。挨拶がすごく上手で、笑うと爽やかで、素敵だなって、思った」

懐かしい記憶に、私の声が自然と柔らかくなる。確かあれは今から1年近く前のことだ。

私の返答に涼介はふふっと俯き、優しく笑った。そしてキョトンとする私にゆっくりと視線を送ると、また言葉を繋げる。

「俺はさ、一番前で俺のこと見てる凛に、すぐ目がいったよ。眠そうで、ぼーっとしてて。正直、こいつ全然聞いてないなって
思った。だけど、一番最後に一番大きな拍手をくれたんだ。それも満面の笑みで。なんだかおかしくて、つい吹き出しそうになったのを覚えてる」
「えぇ?そうだっけ?全然覚えてないや」

そんな昔話にクスクスと笑い合っていると、張り詰めていた心が、少しだけ解けていくようだった。

私はその温かい空気を逃すまいと、手元に作り上げた砂山を指差した。

「じゃーん! 山の完成です。今からトンネルを開通させます!」

砂だらけの手で、彼に向かってビシッと敬礼してみせる。すると彼も悪戯っぽく笑って、同じように敬礼を返してくれた。

「お願いします、隊長」

そのやり取りが嬉しくて、私はもう一度笑った。 だがその笑顔も束の間、涼介はすっと表情を消し、再び海の向こうへと視線を投げる。

「あのときから、すでに気になってたんだろうな、凛のこと」
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