私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

「妊娠……って」

予期せぬ言葉に、堰を切ったように再び流れ始めた涙。それを拭うこともせず、私はただ唇を噛みしめ、涼介を見つめた。

「それを聞いて、いても立ってもいられなくて。すぐに沙羅の家に行ったんだ。本当だった。沙羅も、俺と別れてから気づいたって。……エコー写真も、見た」

エコー……。涼介と、沙羅さんの赤ちゃん。私たちの間には決して存在しない、二人の愛の証。

そう想像しただけで、頭がおかしくなりそうだった。

そんな残酷な現実を振り払うかのように、何度も、何度も首を振った。

「いやっ、これ以上、聞きたくない」
「凛……」

取り乱す私を落ち着かせるように、涼介の大きな手が、頬を伝う涙を優しく拭う。

何度もキスを重ねた唇が、すぐそこにある。だけどその唇も、温かい手も、今は果てしなく遠い。

触れたいのに、もう二度と届くことはないという現実だけが、私を容赦なく追い詰める。
< 88 / 190 >

この作品をシェア

pagetop