私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
気づかれないように、そっとため息を落とし、窓から手元へと視線を移すと、砂で汚れたタイトスカートを、指先でそっと払った。
この服も、全く意味がなかった……。
別れを予感していたから、願掛けのようにこの服に袖を通した。涼介が「可愛い」と言ってくれた、思い出の服。
これを着ていれば、当時のことを思い出して、彼の気持ちが揺らぐんじゃないか、変わるんじゃないかって。そんな淡い期待を込めたのに。
その思いは、砂上の城のようにもろく崩れ去った。涼介は、沙羅さんの元へいってしまうんだ。
想像するだけで胸が張り裂けそうで、膝の上に置いた拳が小刻みに震えだす。この胸を焼くような感情は、沙羅さんへの憎悪なのか、嫉妬なのか。それが何なのかも分からないまま、私は再び力強く拳を握りしめる。
二番目でもいい、沙羅さんの側にいてもいい。それでも一緒にいたいと、そう泣き叫べばよかったのだろうか。涼介は考え直してくれた?
……ううん、それはない。涼介の決意は固かった。それにあんな苦しそうな涼介をあれ以上見ていられなかった。
私があそこで泣き叫べばきっと涼介はもっと苦しむ。泣いてすがることも許されなくて、身を引く選択しか私には残されていなかった。
つまりはあなたと出会った時からこういう運命だったと決まっていて、初めて食事した日のことも、キスした日のことも、全てが必然で、これが私たちの終着駅だということも。