私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
重い沈黙を乗せたまま、車は街を滑るように進んでいく。私はただ、涙で滲む窓の外の光を、魂が抜けたように見つめていた。
その時、カチ、カチ、と無機質なウインカーの音が静寂を破った。見れば車はコンビニの駐車場に着いていた。
「ごめん、さっきからすごい着信で。一旦出てもいいかな」
「あ、うん」
彼は車を降りると店の入り口の方へ向かい、ポケットからスマートフォンを取り出した。その画面をタップする指の動きを、私はフロントガラス越しに、息を殺して見つめていた。
「どうした? うん……大丈夫だから。明日、必ず行くから」
フロントガラス越しに、涼介の声が断片的に聞こえてくる。優しく諭すような声色。相手はきっと、沙羅さんなのだろう。
「今から? 今からは……」
その瞬間、彼の視線がこちらを向き、車の中にいる私とぴたりと合った。ドクリ、と心臓が凍てつくような嫌な音を立てる。
今から来てほしいって、言われてるのかな? 私がいるから行けなくて、内心困ってるのかも。
「ごめん。また、かける」
涼介はそう言うと、気まずそうに電話を切り車に戻ってきた。息の詰まるような重たい空気が、車内に満ちる。
「待たせてごめん。凛の家は、こっちだったよな」
ナビを操作しながらそう言うと、再びブブッと低いバイブの音が車内に鳴り響いた。
ハッとしながら隣を見れば、涼介がスマホを握りしめたまま、その画面をじっと見つめている。また沙羅さんから電話? まだほんの数分しか経っていないのに。
「心臓が…止まってたって…。今日、病院で、そう言われたらしい」
「あか……ちゃん?」
私の問いに、涼介はゆっくりと頷いた。そんな……。