私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~
「だから、あいつ今、混乱してて…」
くしゃくしゃっと、彼は今まで見たこともないほど乱暴に髪を掻き乱す。完璧だった王子様の姿はどこにもない。
「すぐ、行ってあげて」
気づいたら、私の口からそんな言葉がこぼれ落ちていた。
「凛?」
「沙羅さんのところ、行ってあげて。私は大丈夫だから。今、涼介を必要としてるのは、沙羅さんだよ」
瞬きをすれば決壊してしまいそうな涙を、私は必死に上を向いて堪える。
「涼介といたこの数ヶ月、本当に、幸せだった。楽しかった」
押し寄せる嗚咽を殺すため、震える唇にぐっと力を込める。そして車のドアを開けると、夜の冷たい空気の中へそっと降り立った。
「涼介のこと、絶対に忘れない。こんな私を、いっぱい愛してくれて、ありがとう」
本当は私の大好きな、あなたの優しい瞳を見て言いたかった。あなたの顔をこの目に焼き付けておきたかったけど、そんな余力はもう残っていなかった。