私の愛すべき人~その別れに、愛を添えて~

涼介の車が見えなくなると同時に、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。どこへ向かうでもなく、ただふらふらと夜の街を彷徨い、気づけば菜穂の家のドアの前に立っていた。

ピンポーン、とインターホンを鳴らす。すぐにガチャリとドアが開き、スウェット姿の菜穂が現れた。

「凛!? どうしたの、こんな時間に」

驚いたように声を上げると、私の顔を覗き込む。だけど涙と化粧でぐしゃぐしゃになった私の顔を見るなり、彼女の表情は驚きから心配へと一変した。

「凛、あんたその顔……」
「菜穂、私……」

彼女の顔を見た瞬間、堪えていたものが全て決壊した。私は子供のように、わんわんと声を上げて泣き崩れる。

菜穂は何も言わず、ただ私の腕を掴んで部屋の中へと引き入れると、力強く、そして優しく抱きしめてくれた。

「よしよし、とりあえず上がりな。何があったか知らんけど、全部吐き出しなさい」

彼女の部屋は、いつも通り少しだけ散らかっていて、その生活感が、張り詰めていた私の心を不思議と安心させた。ソファに座ると、菜穂が差し出してくれたブランケットにくるまる。

「はい、ココア。あとティッシュ」
「……ありがと」

温かいマグカップを両手で包み込むと、一口ココアを飲む。

< 95 / 190 >

この作品をシェア

pagetop