悪女は穏やかに眠りたい ~『天使の寝顔』は追放先で溺愛される~
慌てて振り返ると、訝しげにこちらを見るルグス国王と目が合った。相変わらず、金色の瞳が美しい。
私は慌てて立ち上がり、お辞儀をした。
「ルグス国王のご到着に気づけず、申し訳ありませんでした」
「気にするな。多くの獣人は足音や気配を無意識の内に消している。気づく方が無理な話だ」
彼は優しくそう言った後、改めて私を見つめた。
「して、どうして頬をつねっていたんだ?」
「え、えっと、、」
咄嗟に言い訳を考えるも、思いつかない。数秒無言だったが、これ以上は不審だろうと判断する。正直に話すしかない、と諦め、小さく、しかしはっきりと答えた。
「…眠らないようにしていたのです」
「眠らないように?」
「はい。アウグスト王国にいた時、仕事が終わらないために徹夜が続いていました。気づけば不眠症も発症しており、この数年、穏やかに眠れた日はありません。しかし今日、皆様に本当に手厚く対応をしていただけて、心身ともに落ち着くことができました。それ故に、久々に眠気を感じていた次第でございます。申し訳ありません」
ルグス国王の表情は変わらない。だが、その瞳の奥に、わずかな動揺のようなものが見えた気がした。
「あちらでの仕事はそんなにも大変だったのか?」
「…家系的にも担うべき仕事が多かったので仕方ないのです」
「はい」とも「いいえ」とも言えない私。彼は私に言葉を受けて、考えるような素振りを見せた。尻尾はユラユラと揺れ、耳がピコピコと動いている。絶対に不敬に当たるのだが、どうにも可愛らしい。
それらの動きを夢中で見つめていると、ルグス国王は顔を上げた。
「よし、決めた。アメリア嬢、今日はあなたとの『義務』は果たさない。ただただ一緒に寝よう」
私の呼吸が止まる。
「え、そ、それは、」
「なに、焦ることはない。すでに夫婦となったわけだ。今日行動を起こさなくてもよいだろう」
彼は静かに笑うと、言葉を続けた。
私は慌てて立ち上がり、お辞儀をした。
「ルグス国王のご到着に気づけず、申し訳ありませんでした」
「気にするな。多くの獣人は足音や気配を無意識の内に消している。気づく方が無理な話だ」
彼は優しくそう言った後、改めて私を見つめた。
「して、どうして頬をつねっていたんだ?」
「え、えっと、、」
咄嗟に言い訳を考えるも、思いつかない。数秒無言だったが、これ以上は不審だろうと判断する。正直に話すしかない、と諦め、小さく、しかしはっきりと答えた。
「…眠らないようにしていたのです」
「眠らないように?」
「はい。アウグスト王国にいた時、仕事が終わらないために徹夜が続いていました。気づけば不眠症も発症しており、この数年、穏やかに眠れた日はありません。しかし今日、皆様に本当に手厚く対応をしていただけて、心身ともに落ち着くことができました。それ故に、久々に眠気を感じていた次第でございます。申し訳ありません」
ルグス国王の表情は変わらない。だが、その瞳の奥に、わずかな動揺のようなものが見えた気がした。
「あちらでの仕事はそんなにも大変だったのか?」
「…家系的にも担うべき仕事が多かったので仕方ないのです」
「はい」とも「いいえ」とも言えない私。彼は私に言葉を受けて、考えるような素振りを見せた。尻尾はユラユラと揺れ、耳がピコピコと動いている。絶対に不敬に当たるのだが、どうにも可愛らしい。
それらの動きを夢中で見つめていると、ルグス国王は顔を上げた。
「よし、決めた。アメリア嬢、今日はあなたとの『義務』は果たさない。ただただ一緒に寝よう」
私の呼吸が止まる。
「え、そ、それは、」
「なに、焦ることはない。すでに夫婦となったわけだ。今日行動を起こさなくてもよいだろう」
彼は静かに笑うと、言葉を続けた。