悪女は穏やかに眠りたい ~『天使の寝顔』は追放先で溺愛される~
 少し迷った後、私はおずおずと口を開く。

「はい、大好きです。元々動物全般が好きで、触れることのできない生き物はいないと思います」
「そうかそうか。それを聞いて安心した」
 
 ルグス国王はベッドを下りて、伸びをするように体を伸ばした。何をしているのか、と疑問に思っていると突然、私の目の前で、屈強な身体を屈めた。
  次の瞬間、
 
 ――ポン!という音と共に、一瞬で彼は姿を変えた。

 そこに現れたのは、巨大な銀色の狼。
 毛並みは比較するものがないほど上質で厚く、サラサラしているように見える。彼はその威厳に満ちた姿で、ゆっくりとベッドに上がり、再び私の隣に横たわった。

「…くるる」

 容姿とは対照的な、可愛らしい声。彼は鼻先で自分のお腹辺りを示す。

「もしかして、お身体を拝借してもよろしいのですか…?」

 正解だとでも言うように鼻を鳴らされる。
 私は戸惑った。しかし、その不思議な優しさを含んだ瞳に逆らえない。恐る恐る、その銀色の毛並みに顔を寄せた。

  温かい

 トクトク鳴る鼓動と、高い体温が私の不安を掻き消していく。そして何より、彼ほど巨大で高貴な存在が私を害するつもりがない、という確かな安心感。

(ああ、こんなに穏やかな気持ちになったのは、いつぶりだろう…)

 数年ぶりに、私の身体は深い休息を求めていることを自覚した。もう、誰も私の邪魔をしない。
 仕事も、陰口も、全てを忘れていい。

 私は、ルグス国王の毛並み顔を埋めたまま、そのまま意識を手放した。
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