悪女は穏やかに眠りたい ~『天使の寝顔』は追放先で溺愛される~
 ガルデア獣人国。通称『野蛮な獣人国』。
 彼らは最強の戦闘力をもつ反面、政治的な駆け引きには疎くあった。元は奴隷的扱いにすらあった獣人だ。1つの国として運営がなされているだけでも驚異的な発展ではあるが、その歴史はまだ浅い。少なくとも、このアウグスト王国の足元にすら及ばないだろう。

(ああ、なるほど。そう来たか)

 最近、アウグスト王国は他国から狙われる機会が多かった。そこで上層部は、最強の戦力である獣人を味方に付けようと計画したわけだ。

 その生贄が私なのだろう。

 悪名高い『悪女』を差し出せば、王国側の『邪魔者』は消えて体面が保たれる。さらに、私を政略結婚の道具として送ることで、いつでも可哀想な犠牲者として見捨てることもできる。救う価値のない人質のようなものだ。これは考えたな。完璧なシナリオだ。

(ま、処刑されるよりはマシかな)
 
「承知いたしました」

 2度目の返答も、やはり感情のない声だった。その時、クリストフ様が嘲るように私に囁いた。

「せいぜい彼らの餌にならぬよう、祈っているぞ。悪女サマ」

 見守っていた貴族たちが、クリストフ殿下の言葉を皮切りに私を罵り出す。
 私は最後まで愚かな彼らに心の中でため息を吐き、玉座を後にした。
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