悪女は穏やかに眠りたい ~『天使の寝顔』は追放先で溺愛される~
「各所に向けての式は後日だ。とりあえず、これらの書類にサインだけしてくれ」

 応接間に通された途端、2枚の紙を渡された。
 1枚は住所を変更するための書類で、もう1枚は婚姻届。獣人の国にもしっかりとした制度が敷かれていて安心した。

 選択肢がないこちらとしては受け入れるだけのこと。とはいえ、念のためしっかり目を通す。その間も、ルグス国王は静かに待っていてくださった。

「書けました。確認のほど、よろしくお願い致します」
「ああ。……うん、問題ないな。このまま申請は通させてもらおう」

 彼は控えていた執事に書類を渡すと、改めて私を見つめた。

「早速で悪いが、まずはこの城の案内を受けてもらいたい。案内は、これからアメリア嬢専属として宛がう予定のメイドに頼んでいる。分からないことがあれば、遠慮なく彼女に聞いてくれ」
「ありがとうございます」

 意外だった。
 正直、部屋に連れていかれてしばらく自由を奪われてもおかしくないと思っていたが、まさかこんなにも厚遇だとは。

 そんなことを思っている間にも話は進み、ルグス国王とは応接間で別れることになった。そして彼と変わるように、猫耳を生やした女性が部屋に入って来た。そしてペコリと頭を下げられる。

「お初にお目にかかります、アメリア様」

 鈴を転がすような可愛らしい声。年齢は私と変わらないか、ほんの少し彼女の方が上かぐらいだろう。

「初めまして。えっと、」
「あっ!も、申し訳ありません!ネネシェと申します!」
「ふふっ、ネネシェさん。どうぞ、よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いいたします!」

 彼女の名前を呼ぶと、嬉しそうに微笑まれた。
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