魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜
 初めて見た、弟の必死な表情。

 今まで何を命じてやらせても困ったように笑い、弱い自分の魔力ではなく自分の手先に頼るしかなかった弟。
 自分の意見も言わずヘラヘラと笑うだけで、そのうちゆっくりと兄である自分を避けていった、弱い弟。


 彼は何も言えなくなり、そのまま立ち去った。

 そのとき残ったのは、完全に弟が去ってしまったという事実。
 そして彼の中に残ったのは、何か心に穴が空いたような気分による“苛立ち”だった。


 今回の鬼娘の事件が終わり思い返してみれば、弟は本当に懸命に自身の“居場所”を作っていったことがわかる。

 人間たちに馴染むつもりにしては、あまりに“臆病”過ぎたあの小屋の場所。

 しかし人間のいる世界に来たばかりで馴染めるかはわからない。
 あの魔力の低い弟からすれば、小屋を住めるよう整えたうえで人間たちから分からないよう魔力の“膜”で覆い隠すなど、相当の苦労だっただろう。

 “人間になる”ということは、それを捨ててまで人間たちに馴染む気になったということ。

 しかも感情の薄い娘とはいえ、魔族である自身のことを人間の娘に受け入れさせることも難しかったはず。
 あれだけ自身のことに懸命だった弟が、兄である自分のあの怒りから必死に庇ったほどの相手なのだから。


「必ず正さなければ。自身の過ちを……」
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