姫花 —ヒメバナ。花言葉は、裏切りの恋—
「え? うん……まぁそうだね」

「黙ってればモテるのに」

「仕事に厳しいだけよ」

「厳しすぎですよぉ。鬼の坂口って言われてるんですからね」

「鬼って……うふふ」

ちらっと視線をそちらに向ければ、そのヒトはスマホをいじっていた手を止めて、同じように私をちらりと見ると、本当に小さくスマホの画面を二度叩く。

そして、静かに裏返してスマホを置いて、パソコンに視線を向けた。そうすれば、お決まりのように私のスマホがフルフルと震える。

それを手にして、画面をタップすれば、そこには……

(ってちょっと!)

すぐにスマホをひっくり返して、デスクに置いた。

(もうっ! もうっ! もうっ!)

再びちらりと盗み見れば、パソコンの影で肩を揺らしている彼の姿。スマホの画面に映し出された言葉たちは、私の頬を熱くする。こんなことを言う人だなんてみんなが知ったら、きっと腰を抜かすと思う。


【——俺のお姫様。攫ってもいいよね? 】
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