続・幼なじみの不器用な愛し方
「いや、これ以外にも他のやつ書いてるんで……このゲラチェック終わったら、またパソコンと向かい合う日々ですね」


眉間に皺を寄せ、難しい顔をする。

このゲラと呼ばれる紙の束とは別に、他にも書いてるなんて……もしかしてこの人、売れっ子だったりするのかな。


「本名でやってるんですか?」

「まさか。ペンネーム使こてます」

「えぇ、じゃあわたし見つけられない」


読みかけの本を手に取って、これ書いたりしてませんよね?と聞くと笑われた。さすがにそんなミラクルはなかった。


「秋山さんも結構本読みはるんですね」

「最近ですけどね、読み始めたの。だからあんまり詳しくはなくて」

「へぇ。あんまりスマホとか触るタイプじゃないんやなーって思ってました」


新しく買ったスマホには、ほとんど何の情報も入っていない。

連絡先も、その他のSNSも、夢中になっていたパズルゲームでさえ。


「スマホ触る機会が減ったから、読書をするようになったんです。時間あるなーと思って買った本が面白くって」

「へぇ。いい出会いをしたんですね」


口元に笑みを浮かべ、石田さんがさらりと言った言葉はわたしの心にすっと溶けていった。
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