続・幼なじみの不器用な愛し方
「まぁ、色々あってなー」


ここ、キルシュについては語ろうとはしないこと。

口を噤む時は、決まって寂しそうな顔をする。


誰にだって触れられたくないことの一つや二つ、必ずある。

わたしだって訳アリなわけで、石田さんは何も聞かずにいてくれているのだ。




「こんにちはー。今日もえらい暑いなぁ」


ある日の昼下がり、頬に汗を滑らせた明海さんがハンディファンを片手にキルシュを訪ねてきた。


「明海さん。いらっしゃいませ」

「こんにちは、美月ちゃん。ちょっと会わんうちに、お腹大きくなったねぇ」

「来週で22週になります」

「そう! 22週超えたら、ひとまず一安心やね」


店内にお客さんの姿はなく、溌剌とした声が響く。

一番奥の席に座ってパソコンと睨めっこしていた石田さんが手を止め、こちらにやってくる。


「来るなら来るって連絡くださいよ」

「近くに寄ったから顔見に来たんよ。美月ちゃんにも会いたかったし」


初対面の時にも思ったけれど、明海さんは随分と面倒見がいい。

こうやってふらりと顔を出しては様子を伺い、ふらりと帰っていく。
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