続・幼なじみの不器用な愛し方
ううん、それだけじゃない。

帽子の下に見える髪は柔らかくて、黒いシャツの下は案外筋肉質で、筋張った手は大きい。

構成する要素1つあれば有斗だと認識できてしまうくらいには、わたしは神崎有斗のことを知っている。


「……美月」


もう一度、有斗がわたしの名前を呼んだ。

切羽詰まったような声色で、存在を確かめるようにして。


やだ。やめてよ。そんな声で、呼ばないで。

奥歯をぎりっと噛み締めて、再び体を翻す。

背を向けて歩き出そうとしても、今度は後ろから手を引かれた。


「やだ、離して……っ」


振り払おうとしても、びくともしない。

強い力でわたしの腕を握るその手は、はっきりと震えていた。


「離さねーよ。やっと……やっと、見つけたんだ」

「っ……人違いです!」

「そんなわけない。俺がおまえを間違えるわけないだろ」


そうだよ。わたし達はずっと一緒だったんだから。

有斗もまた、わたしのことを間違えるはずがないという自信があるんだ。


「美月に会ったら……聞きたいことが山ほどあったんだ。言いたいことも、めちゃくちゃあった。

何もかもわかんねーまま、おまえは俺の前から消えたから」


噛み締めるように、言葉を紡ぐ有斗の声。
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