続・幼なじみの不器用な愛し方
わたし達の横を通り過ぎる少し手前で歩くスピードが落とされ、2つの両目は背後に立つ人物に真っ直ぐ向けられていた。


はっとして辺りを見渡すと、息を潜めるようにしてわたし達の様子を窺っている視線がいくつもあった。

当然だ。遊歩道のど真ん中で突っ立ったまま押し問答をするわたし達は、それだけでただ事じゃない雰囲気を醸し出しているだろう。

そして、有斗は顔が見えなくたって目を引く空気を纏っているのだ。


目の前の男性が神崎有斗だとバレてしまえば、大騒ぎどころかニュースになってしまう。

早くここから離れなくちゃ。

でも、有斗が引く様子は微塵もない。


「……」


頭の中にある考えが浮かんで、すぐに打ち消す。

数瞬のうちに頭をフル回転させて逡巡したものの初めに浮かんだ以上の策を見つけられず、わたしは深く息を吐いた。


「……移動しよう。ここじゃ騒ぎになっちゃうよ」


有斗にだけ聞こえる声量でぽつりと呟く。

もう逃げないと判断したのか、有斗はわたしの手をそっと離し、歩き始めたわたしの後を黙ってついてきた。




駅前のロータリーでタクシーに乗り込み、キルシュの住所を運転手さんに告げる。

滑らかに走り出したタクシーの車内は静まり返っていて、重い空気が肌を撫でた。
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