続・幼なじみの不器用な愛し方
長く息を吐いてから、困ったように笑う。


「なるほどなぁ」


全てを理解した様子で、石田さんが頷いた。

いつもの調子で、目の前に現れた有斗の存在を受け止めている。


「確かに、石油王のほうが気楽やったかもしらんなぁ」


デッドライン前の鬼気迫る顔は鳴りを潜め、石田さんは穏やかに目尻を下げる。


「ちょうど切り上げて帰るとこやってん。必要やったら、ここ使こてもええよ」

「え、でも、さすがにそれは……」

「いらんかったら無理にとは言わんけど、秋山さんち、最低限の家具しかないって言っとったやろ」


言った。わたしの家には、1人分の椅子しかない。

後は、ベッドに腰掛けるか床に直接座るか。

同じ目線で話をするには、わたしの部屋はあまりに向かない。

それに、今のわたしの生活空間に有斗を招かなくてもいいのであれば、この上なくありがたかった。


「鍵……どうすればいいですか?」

「また連絡くれたら取りに行くわ。明日も店閉めるつもりやし、急がんでええよ」


石田さんの提案に、わたしは素直に頷く。

彼はポケットの中から鍵を取り出して、いつかと同じようにわたしの掌に落とした。
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