続・幼なじみの不器用な愛し方
鍵に付けられた古びた桜のチャームが手の中で微かに鳴いて、重みが増した気がした。


「ご挨拶が遅れました。オーナーの石田です」

「こちらこそ、名乗りもせずお邪魔して申し訳ありません。神崎です」


初めて聞く有斗の形式ばった声と、初めて会ったときのような温度の低い石田さんの声。

2人がいかにわたしに心を砕いてくれているかを、思わぬタイミングで思い知る。

最低限の挨拶の後、再び石田さんがわたしに向き直った。


「奥の飲み物とか、好きに飲んでくれてええからな」

「ありがとうございます」

「こちらこそ、どら焼きありがとう。おかげで締め切り乗り越えられそうやわ」


頑張りや。

力強い口調で言い残して、石田さんは店を出ていった。

背中を押され、何とか気持ちを奮い立たせて有斗に向き直る。


「とりあえず……入って」


人通りは多くはないけれど、かと言って少ないわけでもない。

素顔を曝け出した有斗の姿を見られてしまっては大変だ。

ロールカーテンを一度開けてから有斗を中に促して、中に入ってから再び下ろした。


「石田さんもああ言ってくれてたし、何か飲む? コーヒーとかココアとか、結構なんでもあるよ」

「美月」

「さっき買ったどら焼きもあるよ。今日と明日の分のつもりだったけど、しょうがないから1つあげる。今食べるなら、ほうじ茶のほうがいいかな」
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