続・幼なじみの不器用な愛し方
「大事な人の傍におれるんなら、それが1番や。本音に蓋して、わざわざこっち側に来る必要なんかない」


よれたTシャツから伸びる石田さんの白い手が、ゆっくりと伸びてくる。

それは、単調なリズムでわたしの頭の上に乗せられた。


「勝手に乗せさせてや。俺とさくらが叶えられへんかった分まで、めちゃくちゃ幸せになってや」

「いしだ、さ……」

「俺も、明海さんだってついてる。怖いやろうけど、秋山さんなら大丈夫や」

「……っ」


石田さんの姿が、涙で滲んで見えなくなる。

ただ頭に乗せられた手のひらの感触を感じては、本当に大丈夫な気がしてくる。

たった数ヶ月の間に、本当にたくさんの優しさを向けてくれた。

彼に出会わなければ、今のわたしはきっとなかった。


「いしださん」

「なに?」

「わたしが頑張ったら……ご褒美に、石田さんの本のタイトル教えてもらえませんか」


わたしの背中を押してくれた言葉達が、どんな物語を紡いでいるのか知りたい。

どんなふうに物語を彩っているのか見てみたい。


涙を拭って言うと、石田さんが眉を下げて笑った。


「ええよ。約束する」


石田さんの手が、わたしの頭から離れていく。

露に濡れた葉の上から、ふわりと蛍が飛び立つように。
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