続・幼なじみの不器用な愛し方
「まさか、今夜うちに泊まるつもりじゃないよね?」

「そのまさか。今夜俺、宿無しだもん」


だ……だもんじゃないんですけど!?

あまりに白々しい態度に、返す言葉を見つけられない。

有斗の京都滞在予定は、当初から5日間だ。

4日目の今日、ホテルをとっていないはずがない。

それなのに荷物を抱えてここに来たということは、部屋を引き払ってきたのだ。

当日のキャンセルは返金されないはずなのに。


「美月と再会した川沿いにベンチあったっけな。どうしてもダメってんなら、風邪引くかもしれねーけどそこで寝るしかないよなぁ」


こ……この男、ふざけてる!


「わたしが放り出せないのわかってて、卑怯だよ」

「美月の危機管理能力は俺の想像を遥かに超えるからな」


そりゃそうだ。国民的俳優の彼女を長年やってきたんだもの。

望もうと望まざろうと、メキメキと鍛えられるのは必至だった。

だけどわたし達の交際が外に漏れなかったのは、それ以上に有斗が注意を払ってわたしのことを守ってくれていたからだ。


「……はぁ。とりあえず入って」


ノブを有斗に引き渡し、体を翻して部屋に戻ろうとする。

短い廊下の先にある、部屋へと続く扉に手を掛けた時。
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