続・幼なじみの不器用な愛し方

そのさき、

大型連休最終日。


「初めまして。神崎有斗と申します」


カーテンを下ろしたキルシュの1階で、石田さんの隣に座った明美さんがこれでもかと言うほど目を見開いていた。


「お2人には、大変お世話になっていると美月から聞きました。本当にありがとうございます」


わたしの隣で有斗が恭しく頭を下げるけれど、正面の明美さんには多分聞こえていない。

石田さんは、コーヒーを啜りながら飄々とその様子を眺めていた。


有斗が2人にちゃんと挨拶をしたいというので、急遽お呼び立てして来てもらったのだ。

ほぼ全てを知っている石田さんは、関東に戻ることになったという報告を微かに微笑みながら聞き、石田さんから凡その流れだけを聞いてやって来た明美さんは、やはり心ここに在らずという様子で聞いていた。


「お2人のご厚意ですぐに入居させていただいたのに、またいきなり出ていく形になってしまってすみません」

「そんなん気にせんでええよ。な、明美さん」

「え……あ、うん。美月ちゃんとまめちゃんの最善を、わたしらは応援するだけやから……」


状況を飲み込みきれていないまま、明美さんがたどたどしくも言葉を並べる。

そうだよね。いきなり目の前に芸能人が現れるだけでもびっくりするのに、まめちゃんの父親として現れたら更に驚くよね……。
< 189 / 209 >

この作品をシェア

pagetop