続・幼なじみの不器用な愛し方
有斗の頼もしさについ頷きそうになって、ふと思い至る。


「そ……そこまで手配してくれたなら、もう大丈夫だから……有斗はうちにいてね」


なるべく平坦な声で言ったわたしに、有斗はこれでもかというほど顔を歪めた。


「何バカなこと言ってんだよ。俺も行くに決まってんだろ」

「な、何って……! まだ世間になんの発表もしてないのに、一緒に行ったら大変なことになるよ!?」


急患で深夜にやってきた妊婦の家族を名乗ったのが、神崎有斗だったら。

歳の近いただの親戚がたまたま2人で一緒にいたなんて考えにくいし、キョウダイなんて苦し紛れの嘘を吐いても、有斗が一人っ子だということは調べればすぐにわかる。

状況的には、どう考えたってまめちゃんの父親だ。


「今はそんなことどうだっていいんだよ」


穏やかだった有斗の声に苛立ちが混じった。

思わず震わせた肩に畳んでいた薄手のカーディガン、その上から有斗のシャツが掛けられる。


「俺のことはいいから。今は、まめのことだけ考えよう」


入院バッグを取り出して、有斗がわたしの手を迷いなく取る。

わたしはもうそれ以上何も言えなくて、有斗に支えられながら階段を下り、アパートの前にやってきたタクシーに2人で乗り込んだ。




「や……やっぱり1人で来るべきだったんじゃ……」


深夜の病院の個室で点滴が落ちるのをぼんやり眺めながら、さっきの状況を思い浮かべて小さく声を漏らした。
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