続・幼なじみの不器用な愛し方
だけど、わたしの恋人は。この子の父親は……。


押し寄せる波に、喉の奥がひくつく。

薄いピンク色に包まれた潔癖にも思えるような空間に、わたしの啜り泣く声が響いた。

モニターにはもう何も映っていないけれど、さっき聞こえた心拍音はわたしの耳に残ってこだましている。


「……産むかどうか、悩む時間は幸いにもまだあるから。今は突然のことに驚く気持ちも大きいだろうから、一旦、ゆっくり考えてみてもいいんじゃないかな」


問診の時、直接的な心当たりがないことは伝えていたし、問診票には未婚であると記入している。

わたしの心情を慮るような穏やかなトーンで言われて、更に涙が溢れた。


目を腫らしたわたしに、先生も看護師さんも最後まで優しく接してくれた。

でもその中の誰も、わたしが泣いている理由が、子どもの父親が人気俳優だからだなんて想像すらしていないだろう。




1週間後にまた来るように言われて、病院を出た。

桜はとっくに散り、春の日差しを受けた街はキラキラと眩しく映る。

病院に行く前と行った後では、慣れた景色も何だか違って見えた。
< 48 / 135 >

この作品をシェア

pagetop