続・幼なじみの不器用な愛し方
どうして。

びっくりして女性の視線を辿ると、


「あ……」


傍らに置いていた鞄が倒れ、母子手帳を受け取った時に一緒に貰い、ポケットに突っ込んでいたマタニティマークが姿を見せていた。


「えっと……はい」

「ほな、カモミールティーはやめといた方がええなぁ。妊婦さんにはあんまりよくない成分入っとったはずやから」

「あ……やっぱりそうなんだ。すみません、淹れていただいたのに知らなくて……」

「いえいえ。そしたら、これはわたしがいただきますね」


物腰の柔らかい京都弁で、女性がふわりと笑う。


「お体に気ぃつけて。滞在中、何かあれば遠慮せんと言ってくださいね」


標準語を話す、口にしてはいけないものすら把握していないような妊娠初期の妊婦が、1人で数日の滞在。

それだけでも色々と想像が膨らんでもおかしくないのに、女性は詮索することなく、それだけを言い残してラウンジを出て行った。




翌日は生憎の雨模様だった。

ただでさえ悪阻で体が重いところに、徒労に終わった前日のことを思うと腰まで重くなり、わたしは朝から宿泊する部屋にこもっていた。
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