続・幼なじみの不器用な愛し方
「智くん、相変わらず言葉足らずやわぁ。年下の可愛らしい女の子いじめんといて」

「え……あ……」

「ごめんなさいねぇ、秋山さん。口下手なだけで、悪い人やないんよ」


言葉足らずと言われた彼は、バツが悪そうに首の後ろを掻いた。

言葉を探す素振りを見せてから、彼は恐る恐るといった様子で口を開く。


「あー……えっと。大体の事情は聞いた上で、ここ来てるんで。不動産通してへん分、お子さん産まれて手狭になっても、契約期間とかその辺りは融通利かせられると思うんで」


変わらず抑揚の少ない声音。

だけどこれは、もしかして。ううん、もしかしなくても……。


「訳ありっぽいけど変な人じゃなさそうやって明海さんから聞いとるし、聞く限り支払いも問題なさそうやし。アキヤマさんさえ良ければ、うちは入居してもろて大丈夫です」


石田さんが言い終わるなり、再び明海さんの右手が炸裂した。

あからさまに顔を歪める石田さんを無視して、明海さんがわたしに笑いかける。


「無理にとは言わんけどね。市営住宅とかもすぐに入れるわけじゃないし、大事な時期やろうからちょっとでも心配事が減ればええなぁと思って。

それに、智くんのアパートがある辺り、バス停も近いし静かで住みやすいと思いますよ」


明海さんがそっと背中を押してくれたことで、腹が決まった。

大家さんが、言葉選びは容赦ないけど、心根は優しい人だということは十分に伝わってきた。


かくして、石田さんのアパート──『キルシュ』への入居が決まったのだった。




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