続・幼なじみの不器用な愛し方
自由な営業スタイルに思わず笑みが漏れる。コワーキングスペースは、あくまでも本業の傍ららしい。

それでも一定数お客さんが入るんだからすごいなぁ……。


ここ、『キルシュ』は比較的新しい建物だ。

2.3階が居住区だと聞いていたのでてっきり3階建だと思っていたけれど、建物自体は4階まであった。

大家さんである石田さんの住まいかと思ったのだけれど、どうやら違うらしい。

……というより、石田さんはお隣の203号室に住んでいる。


戸数が少ないのに、更に一部屋を自分で埋めている。

通常でも築浅にしては比較的割安な賃料と、採算がとれているのかいないのかよくわからない1階のコワーキングスペース。

採算度外視、というのが正しいのかはわからないけれど、石田さんからはここの大家さんとしてお金を生み出す意思があまり感じられない。


「じゃあ、今日はありがとうございました。気ぃ向いたら、またお願いします」


会釈ともとれない仕草をした石田さんに挨拶を返し、わたしは店の外に出て、アパートの入口がある裏へと向かった。




梅雨真っ只中だというのに連日雨ということもなく、むわりと肌にまとわりつくような空気と、天に悠々と昇る太陽にわたしは顔を顰めた。
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