続・幼なじみの不器用な愛し方
「梅雨って嘘じゃん……」


ショルダーバッグからハンカチを取り出して額に滲む汗を拭うも、汗は次から次へと噴き出してくる。

蒸し暑いのももちろんあるけれど、妊娠してからすごく暑がりになった。

あまりに暑いので慌てて半袖を買い足したけど、今から夏が怖いなぁ……。


最寄りの停留所からバスに乗り、20分もすれば目的地に着く。

終点のそこは2つの路線が乗り入れる駅で、学生や海外からの旅行客も多く見受けられる。

聞くところによると、紅葉シーズンはとんでもなく人がごった返すとか。


そんな駅舎を素通りしレンガ調の歩道を少し歩くと、前方に趣のある京町屋が見えてくる。

麻で出来た涼しげな暖簾をくぐって引き戸を開ければ、食指を刺激する香りがふわりと全身を包み込んだ。


「いらっしゃいませ」


レジカウンターの向こうに立つ女性が顔を上げて声を掛けてくれたので、わたしは軽く会釈を返しつつ入り口付近にあるトレイとトングに手を伸ばした。

陳列棚を何往復もして吟味し、惣菜パンと菓子パンを1つずつ買って店を出る。


また駅を通り越して横断歩道を渡った先に、流れの緩やかな川がある。
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