天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
◇◇◇◇

その翌朝。
レオンハルトが来るまでに、私は一人で計画書作りに取りかかっていた。

(とはいえ、五歳児の字面でガッツリ資料作成は無理……!)

そこで、文字ではなくイラスト中心の資料にすることにした。
棒人間で畑を耕す絵、品物を運ぶ馬車、笑顔で野菜を買うお客さんなどなど。

「うん。これなら五歳児らしいお絵描きに見えるし、内容はちゃんと伝わるはず!」

そう自画自賛した瞬間、甲高い泣き声が響いた。

「ひ、ひぃぃ……!!」
「ふぎゃあああああ!!」

「あっ……エリク、エリザ!?」

私は慌ててゆりかごのそばへ駆け寄った。
双子は手足をばたつかせ、真っ赤な顔で泣き叫んでいる。

「エリク、エリザ。だいじょうぶだよ、セラがここにいるからね?」

(確かこうやって背中をさすってあげて、指を握ってもらえば……)

この前やったように、二人の前に指を差し出してみる。
そうすればきゅっと握ってすぐに泣き止んでくれる――はずが、泣き声はむしろ大きくなった。

「ひぎゃあああ!!」
「ひぃんひぃん!!」

(あれ!?この前はこれですぐに泣き止んで、マルタにも『さすがです』って褒められたのに!?)

困り果てた私は、頭を撫でてみたりゆりかごを揺らしてみたりするけれど、効果がない。
だんだんこっちまで泣きたい気分になりながら格闘していると、外からドアがノックされる音がした。

「……なんだか取り込み中だな」

振り返ると、そこにはレオンハルトが立っていた。
いつもの冷静な顔から一転『面倒ごとに遭遇してしまった』とでも言いたげに、そのままドアを閉めて出て行こうとする。

(ちょっと、いくらなんでも薄情すぎない!?)

「おじちゃま!たすけて……っ!!」
「だからおじちゃまではない、ってちょっと待て、俺は赤ん坊など抱いた経験は――」

私はエリクを抱っこして、強引にレオンハルトに押しつける。

その瞬間。

――すん。

エリクが、泣き止んだ。

「…………」
「…………」

私もレオンハルトも、完全にフリーズした。

さらに、ゆりかごの中のエリザが『わたしも!』と言わんばかりに手を伸ばしている。
レオンハルトが渋々もう片方の腕でひょいと抱き上げると、ふにゃ……とご機嫌そうに微笑んだ。

「……なぜ泣き止む」

レオンハルト自身も、状況が理解できていないとばかりに困惑している。

「なんで!?ずるい!セラ、すっごくがんばったのに!!」

ショックで思わず涙目で抗議をする。
床に崩れ落ちる私を、レオンハルトは笑いを堪えながら見下ろした。

「どうやら――天才少女でも赤ん坊には勝てないようだな」

(……何かすごい敗北感!!)

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