天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
この話は、ゴルドンから譲歩を引き出すためのブラフだ。

エーデルハイム辺境伯がヴェルナー領の国有化を進言し、再建した後にエーデルハイム領に統合する。そうなれば債務は免除となり、高利貸しであるゴルドンには一銭も入ってこなくなるのだ。

「セラね、辺境伯さまがたすけてくれるっていうから……おはなし受けようかなとおもって……」

私はダメ押しとばかりに、うるうるした目でゴルドンを見上げる。

「待て、そんなことをされたらわしの金が……っ」
「知ったことではないな」

レオンハルトは興味がなさそうに切り捨て、悠然と微笑む。

収入源が絶たれるゴルドンとしては死活問題。
勝負はここからだ。

「貴様も十分利息で儲けただろう?負債まみれの顧客を抱えているよりいいんじゃないか」
「な……っ、そ、そうしたらヴェルナー家も離散だぞ!?」
「どうせ借金しかない没落貴族だ、早晩資金繰りは行き詰まる。いっそゼロベースにしたほうが効率的だ」

(出た!冷酷貴族ムーブ……!)

両親を亡くし、莫大な借金だけを残された不幸な令嬢。
そんな彼女からすべてを奪おうとする悪魔のような辺境伯。

傍からだと、幼気(いたいけ)な少女が言いくるめられている構図にしか見えない。
これが事前に二人で打ち合わせした作戦だった。

その名も――ぜったいおうちをまもるぞ大作戦。

「き、貴族ともあろう人間が、こんな少女から家を取り上げるなんて人の心がないのかー!?」

気がつけば、ゴルドンがセラフィーヌ寄りに傾きつつある。
金には汚いが、意外にも情には脆いようだ。子どもが涙ぐみながら債務放棄を受け入れる姿ほど、この高利貸しにとって悪夢の光景はないらしい。

(よし、もう一押しでいけそう)

「利率二十五パーセントの暴利ではどうにもならない……さて、どうする?」

レオンハルトもここがタイミングと見たのか、大げさなほどゆっくりと足を組み替えながら『本題』を切り出した。

「分かった、利息は下げる!半分でどうだ!?」
「たったそれだけか?時間の無駄だったな――セラ?この債務放棄と領地譲渡に関する契約書だが……」

一蹴したレオンハルトが、打って変わって優しく私の頭を撫でる。

何も分かっていない令嬢を丸め込むような、甘い声と眼差しを注ぎながら。

(この人……ちょっと楽しんでない?)

案の定、ゴルドンは土下座する勢いで身を乗り出した。

「わ~~~っ早まるな!分かった下げる!十分の一でいい!」

私たちは顔を見合わせる。
私は心の中でガッツポーズ、レオンハルトは勝ち誇ったようにニヤリと笑った。

「こちらですでに条件は書き換えてある。ここにサインを」

レオンハルトが用意した新たな合意書。
ゴルドンが署名する様子を見下ろしながら、レオンハルトは耳元で冷たく告げた。

「この書面の効力は分かっているな?次にこのヴェルナー領を食い物にしようとすれば――俺が容赦なく潰す」

「ひい……っ!」

ゴルドンはカクカクと首を縦に振るしかなかった。


こうして、私たちの初めての共同作戦――ぜったいおうちをまもるぞ大作戦は成功した。

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