空色の春
と、そこで。

「唯莉ー!何やってんの。行くよー!」

歩夢の声が聞こえて、隣にいる伊藤恋路に目を向けた。

「じゃあ、私行くね。」

「どーぞいってくださーい」

ひらひらと手を振りながら、自分のチームに帰っていく伊藤恋路。

初めて話せたな…

「イトレンと話せてたじゃん!どうだった?」

いつの間にか隣にいた世奈に、そんな事を聞かれる。

イトレンというのは、伊藤恋路のあだ名だ。

「どうも何も…悪い噂ばっかの割にいい奴ぽいなぁ…って。そんな感じ」

嘘。本当は今でも伊藤恋路が言ってくれた言葉、頭の中で繰り返してる。

『できないけど、本気』

ちょっとぶりっ子なだけで、嫌われたり、勝手なイメージを持たれることは多かった。

慣れてたけど、本当の自分を知ってもらえるのって、こんなに嬉しいんだ。

「そおっかぁ…まあまだ唯莉は凪斗の事好きだしね。」

「うん。明日学年集会で1時間同じ体育館にいられるのが楽しみで寝れないぐらいには好き。」

「大好きじゃん。」

笑う世奈を眺めながら、少し遅れてチームの元に戻った。

その日から、バスケの練習の度に、伊藤恋路が話しかけてくれないか、少し期待した。
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