仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 いきなり名前を呼ばれたため、声が裏返った。
 誌史の隣では、夏生が小声で「〝誌史〟?」と訝しむ。


 「この牛筋の煮込み、美味しいから食べてごらん」


 唐突に小皿を差しだされ、誌史は目を瞬かせる。


 「あ、はい、ありがとうございます」


 慌てて受け取ると、修吾は先ほどの里依紗に対するものとは打って変わってやわらかな笑みを見せた。
 夏生は一瞬手を止め、里依紗は唇を引き結んだ。

 (なんか……やっぱり変な空気になってる……)

 誌史は胸の鼓動を早めながら、熱いお茶を喉に流し込んでどうにか平静を保とうとした。


 「ほら、誌史ちゃん、これも食べなよ。好きだったろ?」


 今度は夏生が、小皿に里芋団子のあんかけを盛りつけて差し出してくる。それは、ここへ来ると誌史がいつも好んで食べている料理だ。


 「あ、ありがとう……」
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