仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 気づけば、首を横に振る選択肢は失われていた。


 「引っ越し業者は俺が手配しておく。日程はまた知らせるから」


 修吾は当たり前のように告げる。


 「荷造りも無理にひとりでやらなくていい。手が必要なら呼んでくれ」
 「……はい」


 誌史は思わず素直にうなずいてしまう。

 (本当に……修吾さんと一緒に暮らすんだ……)

 理解していたはずなのに、胸の奥で鼓動が暴れ出す。どうしても落ち着かない。
 タクシーが誌史のマンションの前に止まった。


 「着いたな」


 修吾が先に降り、手を差し伸べて誌史を降ろす。ふたり並んでエントランスまで歩くと、そこで彼が立ち止まった。


 「今日はありがとう。……おやすみ」
< 125 / 289 >

この作品をシェア

pagetop